長い長いため息をついたところで、取り返しがつくわけではない。
ものすごい失敗をしてしまった。
失敗するのが怖いから、失敗しないようにやってきた。
それなのにこの世界ではどうにもうまくいかなくて、誰かにカバーしてもらう事も日に日に増えた。
だとしてもだ。あれはない。最悪だ。一歩間違ったら誰かに怪我をさせたかもしれない。

「白昼堂々サボりたァ良い度胸してやがるな」
「ヒエ……」

9割自己満足の大反省会は3分で終了した。あろうことかリーダーに見つかってしまったからだ。

「ごっごめんなさいぃ!もうラボの物には一切触りません許してェ!」
「いや誰もそこまで言ってねーわ。ただ分かんねえなら触る前に聞けっつー話だわ」

見事なツッコミ、千空先生の仰るとおりです。
一人でなんでもこなすなんて無理だ。
でも、皆それぞれ役割があって忙しい。
結局、私がいらない遠慮ばかりして最悪の結果を考えられなかったのが原因なのだ。

「で、怪我は」
「へ?」
「テメーはなんともねーのかよ」
「こんなの全然。私、体だけは丈夫だし!」
「そういう問題じゃ……チッ」

舌打ちって……。まあいいや。
そろそろ気を取り直して戻らなければ。

「千空ごめん、私もっとちゃんと色々覚えるから。これからは気を付けます」
「おう。立ち直りが早くて実におありがてえ」
「へへ、大事なのは失敗の先。頭働かせて手を動かした方が良いもんね」

そう言うと千空はちょっと驚いたような顔をした。
この石の世界で色々な物を作ってきた千空だって、すぐにできる訳じゃない。
何回も何回も失敗して、考えてやり直して、そして成功に辿り着く。
彼の言葉を借りるならば、まさにトライアンドエラーである。

「分かって来たじゃねーか。失敗初心者の卒業証書、やるよ」
「やったー!って、それ……素直に喜んで良いの?」
「さあな」

千空はニヤリと笑うだけだった。



2020.5.10


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